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「なむ」は平成2年から毎月発行している福住寺の寺報です。
月報「なむ」
2022年10月
如来の作願をたづぬれば 苦悩の有情をすてずして
回向を首としたまひて 大悲心をば成就せり
(親鸞聖人 正像末和讃)
「親の心子知らず」という言葉を耳にすることがあります。親の愛情や苦労はなかなか子供には通じないで、子は勝手気ままにふるまっているという例えで使われることわざです。
今は自立している私たちではありますが、決して一人で成長してきたわけではありません。特に小さな子どもの時は、一人では何もできない、それどころかほっておいたら何をするかわからない、また、そんな危なさをもった自分であるということにも、もちろん気づいてはいなかったと思います。そんな私を親は決してほったらかしにしたりはしない、いつ何をしているときでも心配でほってはおけないと見守り続けてくれている。そんな親の思いに抱かれながら親に見守られながら今この時まで育てられたことかと思います。
「如来の作願をたづぬれば」阿弥陀様がなぜ願いを立ててくださったのか、そのお心はまさに私のためにと向けられた親心であるように、決して見捨てないという無条件の思いからであります。
阿弥陀様は、もともと何の力も持ち合わせていないこの私のことをすでに見抜いて下さっている。その上で、そんな私だからこそ何とかしたいと、その大きな思いのつまった功徳を私のもとに届けるために願いを立てお慈悲の心をもってその願いを完成させてくださったのであります。そして、その願いを「南無阿弥陀仏」の名号に込めて今、お念仏の声となって届けてくださっている。自分のありのままの姿になかなか気づくことのできないこの私ではありますが、つねに先回りして願い続けてくださっている阿弥陀様のお働きをいただくことによって本当の私の姿に気づかせていただき、改めてわが身を振りかえらせていただく、阿弥陀様のお育てにかなう生き方をすることが大切ではないでしょうか。
October 2022 Issue