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「なむ」は平成2年から毎月発行している福住寺の寺報です。
月報「なむ」
2019年7月
一番わかっているようで 一番わからぬこの自分(相田みつを)
趣きの深い詩や散文を残された相田みつをさんは、その著『にんげんだもの」に独特の字体でこのように書かれました。
私たちは、自分の生き方に対して、他人から助言や忠告をいただくことが何回もあります。表面では領いていますが、心底素直に受け止められないのが自性ではないでしょうか。たとえ好意から出たものと分かりながらも、「そんなことは言われなくても、自分のことは自分が一番よく知っている」という思い上がりが私の心の中にあるからです。
しかし、今日までの人生を振り返ってみますと、「もしあの時?でなかったら」とか、「なぜあんな事を…」と思い出すものがあります。それは健康のこと、人間関係のこと、仕事のことと多岐にわたっています。その時、その事に対して決して浮ついた気持ちで決断や行動したわけではありません。しかし、後々から考えてみますと、後悔の念で取り返しのつかないこともあります。
お釈迦さまは、「そなたは愚かな人間で、力が劣っており、まだ天眼通(てんげんつう)を得ていないから、はるか遠くを見とおすことができない」(仏説観無量寿経)と、説法されています。「はるか遠く」の事どころか目前の事でさえも正しく見ることのできないのです。ともすれば、自分の都合のいいようにモノを見て捉えてしまうのが私たちではないでしょうか。
そんな私たちの自性をはっきりと見せてくれる教えこそが仏教なのです。仏教を聞くことは自分の本当の姿を聞くことなのです。
これからも、ご一緒に仏さまのみ教えを聞かせていただきましょう。