言葉の宝石箱
大切な方をなくされ、
悲しみに討ち惹かれているとき、
ひょっとした言葉に救われるようなことがありませんか。
何も手助けはできませんが、
その悲しみを乗り切った方の心に触れたものです。
そんな願いでこのページを作りました。
頑張りすぎたなあと感じたとき思い出して下さい。
皆様からのこころに残った言葉を
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いのちの雪片
数知れない雪片のひとつが
私の 掌に それが とけてゆく
とけてゆく 生きもののように
形をかえていく とけまいと
けんめいに 掌の温度に抵抗して
戦っているようだ
往生ぎわの わるい 小さい 雪片
わたしも 雪片かもしれない
老いたくない 老いたくないと
若さにしがみつきながら
けっきょく「老」という掌にとけてしまう私
掌の上のちいさい水滴 雪片のとけた水滴
待っても 待っても
蒸発しない 掌にしがみついている
往生ぎわのわるい 水滴
でも とうとう いつの間にか
空中に 消えていった乾いた 掌
私も
どんなにこの老いたいのちにしがみついても
やがて 消えていくだろう
ああ しかし
消えていった あの水滴 無くなったのだろうか
ちがう
再び雲になって
うちの野菜畑に降るだろう
土手の草の上に降るだろう
山の 杉の木に降るだろう
野菜が育ち
草が育ち
杉が育つ
ああ いのちの 雪片
東井義雄